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「先輩、どうして…」
その言葉に、先輩は、一つの物陰を指さした。
物陰から、スマホを手に、出てくる一つの小さな姿があった。
「しっかりと録画しましたからね。彼らが何か言ってくるようなコトがあったら、コレを証拠にすればいい訳です」
狭霧ちゃんだった。
何で、と聞く間もなく、先輩は、
「彼女が教えてくれたんだ」
「何か変だと思っていましたから」
ニコリと笑う。
尾行されていたの?先輩と一緒に?そんな考えが浮ぶけれど、狭霧ちゃんは、「それじゃあ、後は先輩の役目です♪」と言うや、どこかに消えていってしまった。
その場には、私と先輩だけが残される。
腰が抜けてしまった私を、先輩はひょい、とお姫様抱っこ。
その瞬間、余りもの先輩との近さと、その香りに、ドキッとして―――さっきまで泣き出しそうだったのに、頭の中が茹だって、何も言えなくなってしまった。耳まで真っ赤になっているだろうと思うと、恥ずかしくて、何も言えなくなってしまう。
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