かえりみち

2/5
前へ
/119ページ
次へ
「先輩、どうして…」 その言葉に、先輩は、一つの物陰を指さした。 物陰から、スマホを手に、出てくる一つの小さな姿があった。 「しっかりと録画しましたからね。彼らが何か言ってくるようなコトがあったら、コレを証拠にすればいい訳です」 狭霧ちゃんだった。 何で、と聞く間もなく、先輩は、 「彼女が教えてくれたんだ」 「何か変だと思っていましたから」 ニコリと笑う。 尾行されていたの?先輩と一緒に?そんな考えが浮ぶけれど、狭霧ちゃんは、「それじゃあ、後は先輩の役目です♪」と言うや、どこかに消えていってしまった。 その場には、私と先輩だけが残される。 腰が抜けてしまった私を、先輩はひょい、とお姫様抱っこ。 その瞬間、余りもの先輩との近さと、その香りに、ドキッとして―――さっきまで泣き出しそうだったのに、頭の中が茹だって、何も言えなくなってしまった。耳まで真っ赤になっているだろうと思うと、恥ずかしくて、何も言えなくなってしまう。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

95人が本棚に入れています
本棚に追加