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「…みーちゃん一人助けられなくて、何のために鍛えてきたんだって感じだよな」
アハハ、と誤魔化すような笑い。私はでも首を振った。
先輩は―――格好良かったから。
私のために、その拳を振るってくれた。
それだけで、胸が一杯になってしまって。
「あの、先輩…」
「ん?」
「あの、私なんて、そのっ、あんな風に…」
ああ、胸が詰まる。苦しい。こんなこと言いたくない。でも―――もうバレちゃったんだ。そう考えるだけで胸の奥が痛くて痛くて仕方ない。
一番バレたくない人に、バレちゃった。
私があんな目に遭ったなんて。
でも、先輩は、私の言葉を聞いて、
「何で、それで、俺がみーちゃんを嫌うんだよ」
「だって、私っ…」
涙が零れてきてしまう。情けない。先輩の胸の中で、抱っこされて、私泣いてる。
嬉しくて、悲しくて、もうグシャグシャで。
もう何も考えられなくて。
私はずっと泣き続けた。
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