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教室の戸を開けたら、そこには壁ドンされている妹の姿があった。
「―――」
思わず弁当箱を手に硬直してしまう俺。
そしてすげー驚いた顔でこっちを見ている妹と―――それに迫ってる男一人。
ブレザータイの色を見ると、かの男は俺と同学年らしい。
銀縁眼鏡の、どこかで見たような、見たことないような。まあ同期が280名いるんじゃなかなか分かりっこもないか。とにかく長身の男がこちらを見て少し驚いた顔をしていた。
朝練も始まっていない時間の教室で、時の流れが暫し凍っていた。
「―――」
しかし、コレは兄としてどういうべきなのだろうか。
ただ妹が忘れた弁当を届けに来ただけだったのだがとんでもない現場に居合わせてしまった模様。
俺が出すべき単語を選んでいるうちに、こちらを睨んできたのは、妹に迫る男だった。
「…何の用だ。朝っぱらから悪趣味な」
「あァ?」
だが、刺々しいその銀縁眼鏡の言葉に、口から零れ出たのは喧嘩っ早い言葉だった。
メンチを切った。ちょっとばかり俺よりタッパがある身体の持ち主だったが、躊躇わず睨む。
「悪趣味なのはどっちだってんだ。朝っぱらから悪趣味なモノ見せつけてくれやがって」
場合によっては空気を読んで「失礼しましたー…」と尻尾を巻くことも考えていたのだが、そんな選択肢は一瞬で頭から吹っ飛んだ。
こいつは俺の敵だ。
だからずかずかと歩み寄って、まだ壁ドンされている妹を睨んだ。
「おい三咲(みさき)」
「…な、なに、お兄ちゃん」
「てめえが誰と付き合おうが勝手だが俺はこいつは気に食わない。弁当机に置いとく。忘れもんだ」
そう言って、妹と迫る男はうっちゃって、妹の机に弁当箱を置く。
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