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数日後、シルフ王が全ての魔導兵を緊急招集した。
何やら大変重大な話があるらしい。
魔導兵は全兵合わせて500名程度いた為、魔導兵達は王宮前の広場に固められて集まった。
「一体何があったのかな?」
そして、王宮からシルフ王が現れた。その後ろにはもう1人、黒髪で細身の中年が灰色のローブを纏ってシルフ王に付いていた。
誰だろう、あの人は?
そう思ってる中、シルフ王が隣の男性について説明を始めた。
「皆の者に紹介する。この者は本日より私の宰相となる者だ。名はハイド・スペクター。」
宰相とは、王に代わって宮廷で国政を担当する者の事であり、現代の日本などでは内閣総理大臣に相当する立ち位置である。
しかし、宰相になる者といえば国で王の次に慕われている者が普通なのに、この人はシルフの者でもなければ今日初めて見た人だ。
不気味な魔力の男。
フィナがハイドに対し初めて抱いた感情はこれだった。
するとシルフ王はそのまま話を続けた。
「そして、早速であるがこのハイドから新たな法案を提示された。今、大国同士で不穏な空気が流れている。恐らく大国同士での戦争もあり得る。この大国シルフも遅れを取るわけにはいかない。」
「よって、我々シルフ大国も隣国からの攻撃に備えて軍事力を強化する。その為に今後国民達からの納税を増やす事にする。」
突然の事で頭が追いつかない。
国民から取り立てる税金の増税。その理由が軍事力強化?
他国との戦争を起こさない様に動いてたシルフ王の発言に疑問を抱いた者はフィナ以外にもいた。
「シルフ王!それは戦争が始まるという事なのですか?北の大国は数日前の議会でこちらには矛先を向けないと…」
1人の魔導兵がシルフ王に問い掛けてるとシルフ王はその魔導兵に指を向け、指から細長い白い光の筋が魔導兵の胸を貫いた。
「ゴフッ…」
魔導兵の男は胸を貫かれた事で口から大量の血を吹き出し、その場に倒れた。
その場にいた他の魔導兵は一瞬時が止まったかの様に動かなかったが、すぐに倒れた者の近くに駆け寄った。
しかしシルフ王は駆け寄る事を制止し、冷めた目で広場に集まってる魔導兵達を見下ろしていた。
「…図が高いぞ。誰が喋る事を許可した?馬鹿者が。」
その冷めた目と発言からフィナとシドは冷や汗をかいた。
この人は誰だ?いつもの王とは違うぞ。
そう喋ろうとしたが、目の前の魔導兵が殺された現実を見て、ここに居る誰もが口を開かないまま心の中で留めた。
「貴様ら魔導兵風情が軽々しく政治に口を挟むな。軍事力の強化はこの国の安寧を守る為のもの。これは命令だ。絶対王政の国で疑問を抱くとは何事だ。今後疑問を抱く者は反逆者とみなす。」
そう言い残したシルフ王はそのまま王宮の中へ入っていき、その後ろをハイドと呼ばれた男も付いて行った。
しかし、目の良いフィナは見逃さなかった。
灰色のローブを纏って目元は見えなかったが、王宮へ入って行く際に口元の口角が少し上がっていた事を。
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