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それから数年が経ち、私は陽の継承者としての生活を送っている。
陽の魔力を継承する事で、その魔力のコントロールの仕方や訓練、あとは実戦経験を積むために盗賊や魔物の討伐をしていた。
そして何よりも変わった事がある。
それは、誰も王の娘などと呼ばず、私自身の実力を認めてくれる様になった事。
それが何よりも一番良かった事だ。
けど、まだ何か物足りない事があった。
それが何なのかは分からないけど、とりあえずもっと強くなればいいのかと思い、私はひたすら修練に励んだ。
そして、私が10歳の頃に転機が起きた。
その日、陽の継承者である私は一族の王である父に呼ばれた。
それは家族の問題で呼ばれたのではなく、今日は陰陽魔術である「陽」の私ともう1人、「陰」の継承者が初めて対面する日だ。
この対面の日は「陰陽の儀式」と呼ばれ、陰と陽の相対する2つの存在が永久的に繋がりを保つ為に長年行われている儀式だ。
正直私の中では、そんな儀式なんか行く意味ないと思ってるけど、ズル休みした人みたいに言われるのは嫌だから行く事にした。
陰の継承者を決めるのは太陽の遺跡ではなく、南の大国シルフで行われていた。
陰陽の儀式は、太陽の遺跡で一番の象徴とされている「太陽の神殿」という場所で行われる事になる。
石造りの柱が周囲に建てられており、その一番真ん中に約15mほどある太陽の神の石像が建てられている。
その石像の目の前で儀式が行う事になった。
「森羅万象を司る神から与えられし陰陽魔術。それらを継承した者同士を我々は未来永劫称えよう。」
神父服を着た司会者が何やらよく分からない事を言っている。
早く終わらないかな?
私はそう思いながら、今日来た陰の継承者の姿をチラッと見てみた。
なんて事はない。ひ弱そうな黒髪の男。
おまけにメガネまでかけてクールぶってる感じが見てて気分が悪くなる。
この時の陰の継承者はネル・ナイトフォースではないが、その理由はまた先になると分かるだろう。
「では陽の継承者、フィナ・プロミネンス。前へ。」
どうやら私が呼ばれたらしいので、言う通りみんなの前へ出た。
「続いて陰の継承者、シド…すいません、フルネームでは?」
「ありません、俺には親がいないですから。」
すると周りの人達はざわついていたが陰の継承者の黒髪男は気にせず私のところへ歩いてきた。
そして、私の顔を見る事なくそのまま横に並んだ。
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