第16話 認めてもらう為に

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私が言えることではないけど、その男は無愛想で近寄りがたい雰囲気だった。 しかも、両側の髪が整えられていて目つきも細く、おまけに細過ぎる体つき。 こんな弱そうやつが本当に陰の継承者なの? これじゃあ私が死ぬほど努力してやっと手にした陽の力が馬鹿らしく感じるわね。 私も陰にしとけば良かったわ。 心の中でそう思いながらも、私は隣にいるシドと司会の話を聞いた。 「それでは陽と陰。2つの力を今ここで交わらせ、永遠の安寧を我々に与えたまえ!」 司会がこれを言ったという事は、私とこの男は2人で握手をしなければならない。 この握手が、代々伝わる儀式で一番必要な事で、これが終わるとあとは呑んで歌って楽しく宴をするだけ。 ただこれだけの為に、私がここに呼ばれたと考えると非常に腹が立って仕方ない。 向こうの男は、手を出して握手するポーズを取るが、私は中々自分の手を出そうとはしなかった。 「フィナさん!手を出して、手を!」 「…」 握手しなければ、儀式としては成り立たない為、周りの人達はまだなのかと痺れを切らす。 そして、私は口を出した。 「私は、この人と握手する気はありません!」 その一言で、どういう事なのか理解できず、周りはざわつき始める。 「えっと…フィナさん?それは一体どういう…?」 「私は、陽の継承者に選ばれようと今まで死に物狂いで努力しました。だから、私は自分と同じ程の強さとその苦労を経験した人じゃなければ、握手なんてしたくありません!」 儀式なんて関係ない。私は本気で努力した。だから、普通の人と同等の扱いなんてされたくないという思いで言った。 当たり前だけど、私の言った事で反感を買う者がいるわけで、私に向けて凄まじい罵倒を浴びせた。 「ふざけるな!私たちのシド様を侮辱する気か!」 「お前こそ、身の程知らずにも程があるぞ!」 「何様のつもりだ!」 努力してない者に何を言われても私にはどうでもいい。 悔しかったら、ここまでなってみなさい。 けれど、この頃の私は強さに捉われすぎて性格が歪んでいたのかもしれないが、自分は正しいのだと思い何を言われても動じなかった。 そして、今まで黙ってた陰の継承者は握手の手を引っ込めてから口を開いた。
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