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「心の弱さは変わらない?あなたは変われていないの?」
フィナが聞くと、シドはゆっくりと話し始める。
「僕は元々孤児なんです。生まれてから親にも会ったことないし、物心ついた時は物乞いで生きながらえていました。」
「いつも汚い、臭い、気持ち悪いなどの罵倒を受けながら過ごしてきました。なんで僕ばかりこんな目に遭うんだろう。このまま死にたいなんて思った事もたくさんあります。」
それから彼の話を聞き続けた。
誰からも相手にされず、ずっと一人で過ごしてた日々。
何日も食事を摂れず、餓死寸前だった時に助けてくれたシドの恩人。
その恩人に大きくなるまでお世話になり、その人にはいくら感謝しても足りないくらいの恩があると。
陰の継承者を決める試練は、最初はキツくて心が折れそうになったが、恩人の支えや競争心の強いライバルとの激戦によって、みんなに認めてもらいながら継承できたこと。
その時に一番喜んでくれたのは他でもない、恩人の方だった事。
シドは自分が陰の継承者になった経緯を全て話してくれた。
「僕は弱い。何故なら、一人では絶対に乗り越えられなかった事がいっぱいだったから。肉体的にも精神的にも、この世界で生きるのはとても厳しい。」
「小さい時に受けた心の傷が今でも残ってる様に、人は心をリセットする事は出来ません。むしろ、蓄積されて背負いきれない重いものになります。」
「だから、継承者になってから、蓄積された心の重いものを何とかする為に力を使いたい。そう思うようになりました。」
「…それであなたは、どうやってその重いものを何とかしたいの?」
シドの話を黙って聞いていた私は、その対抗策はあるのか質問した。
「…あなたのお父さんみたいな人になりたいです。」
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