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王の護衛というのは、大抵力の認められた者だけが任される任務。
それをフィナ達の様な子供に任されるというのは、陰陽魔術を扱えるからというだけの理由ではない気がする。
きっとフィナ達が今の任務が退屈だという子供じみたオーラが出ていた為、優しいシルフ王が気遣って命じてくれたのだとこの時は思った。
しかし、シルフ王は城外に出るとは言っていたがどこに行くとは何も言っておらず、ただ2人に対して雑談をしながら城外の街を歩いていた。
この世界の4大国の平均人口は約4000万人程度であり、大国シルフには約4500万人程の人口が暮らしている。
そこで暮らす人々は活気に満ち溢れており、市場や街の店には沢山の人で賑わっていた。
そこを通るシルフ王とフィナ達を見た通りすがりの街の人々は王に対してひれ伏す様な事はしないが、皆んなが会釈をして挨拶をし、3人の道を開けてくれた。
王が主体の国であるにも関わらず、王が通ってもひれ伏す必要が無いのは、シルフ王自身が国民の生活を無視してまでする必要は無いと考えているからである。
そしてシルフ城下町の北区にある大きな市場に着いた。
そこでシルフ王は何やら食べ物のお店を見つけ、そこで2人分の何かを購入した。
「これはな、ジェラートという冷たくて甘い食べ物だ。頑張ってる2人にご褒美だよ。」
シルフ王が持ってきたのは、コーンと呼ばれるスナックのカップに氷の様に冷たい塊が乗っている食べ物であった。
普段は王宮に住み込みで働いており、あまり城下町には行かない為、この様な簡易だけど珍しい食べ物を初めて見た。
フィナのジェラートは白く、シドのは少し茶色めの色だった。
それを口に含むとあまりの冷たさに驚いた。
「っ…!?何これ!冷たいけど、おいしい!」
「本当だ!僕のはこれ、チョコですよね?シルフ王、ありがとうございます!」
あまりの美味しさにシドは大声でシルフ王にお礼を言った。
すると店の店主が王に対して。
「シルフ王、今日の護衛はえらく小さいじゃねーですか。」
店主は大柄で、よくいる気が良さそうな大将気質が溢れた感じである。
「ああ、未来ある見習い魔導兵だよ。お前さんとこのジェラートはこの国では有名だから食べて貰いたくてな。」
「そうでしたか!…良かったな、嬢ちゃんと坊ちゃん!アイス食えて!良かったらまた来てくれよ!」
そう言って店主はフィナとシドに対して手を振りながら見送ってくれた。
繁盛して大変そうなのに気の良い人だな。
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