第16話 認めてもらう為に

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店内を見てみると少し内装が変わったのかな? シンプルな内装から段々とお洒落で明るめの色合いになっている。 それに3年前に比べるとジェラートの種類が増えてる様な感じがする。 そういった変化を見ると少し寂しく感じるが、でも店主の明るい表情や店内の雰囲気自体は変わりなく、これを見ると穏やかになれる。 そして隣にはずっと一緒に仕事をしてるシドがいる。 これからもこの何気ない幸せがずっと続けば良いと思っていた。 「久しぶりだったね、ジェラート。」 「そうね。何度かシドとは他のジェラートを食べに行ってたけど、あのジェラートが一番美味しい気がする。」 王宮への帰り道、もう辺りはすっかり暗くなってきており、いつもは賑わっている大通りも行きしなに比べると人通りは少なくなっていた。 「こんな幸せがいつまでも続くと良いな。」 え、私が思ってた事じゃない。 「私も、同じ事思ってたとこなのに先に言われた…」 「あ、そうだったの?ごめんごめん。」 でも、こういう事なんだよね。シルフ王が私達に分かって欲しかった事。シドが戦争を嫌がっていたのも。 今の幸せはどれだけ続くか分からないけど、少なくとも今はとても楽しいと感じてる。 だって、認められる事と強さだけに囚われてた私が、今こんなにも生きてる事に充実してるんだから。 それに、 「ねえ。今度の休暇、予定なければ一緒に買い物に行かない?」 「え、良いよ。何か欲しい物があるの?」 「うん、ちょっと前々から欲しい物があって…」 今はこのシドと一緒にいる事が楽しい。 これからもこうやって何気ない日を楽しめる平和な日々が永遠に続けばと思っていた。 しかし、その日々はある日と共に壊れていく事になる。 それは今から12年前、悲劇の月の民殲滅戦が丁度この時期に起こり、そこからは今からでは想像もしない失いと悲しみ、絶望の日々であった。
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