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月の民達も可笑しいと思ったのか1週間経ってもシルフから帰って来ない他の民がどうしてるのか連日聞きに来ていた。
しかしその意見は聞かれる事なく、答えなく帰された月の民は仲間の為にシルフへ乗り込んだ。
月の民は元々強靭な肉体を持っていた為か突然の襲撃により大量の国民が命を落としていった。
この世界では大国同士で結んだ条約があった。
それは(大量の虐殺が国で起きた場合、他国の魔導師を要請する事が出来る。)というものだ。
月の民が仲間を救おうとシルフを襲撃した行為は結果、後の月の民殲滅戦という戦争に発展したのである。
「先日の月の民襲撃によって罪なき国民達が犠牲となった。これはいかなる理由があれど許される事はない。条例460(よんろくまる)に従って、四大国からも魔導士達を派遣して月の民に報いを与える。」
シルフ王は月の民殲滅戦の開戦宣言を魔導兵達に言った。
その隣には勿論、ハイドと呼ばれた男がいた。
ハイドは基本あまり喋らないがシルフ王が何か決め事をする時は必ずハイドが後ろに付いていた。
開戦宣言によって魔導兵達は戦争の準備をしていた。
フィナとシドも同じく準備をしていたが、2人は陰陽魔術の継承者として別室で装備を整えていた。
「やっぱり可笑しいわ。そう思わない?シド。」
防具を着けながらシドに問い掛けるフィナ。
「今回の戦争、まるでそうなるかの様に仕向けてる気がする。月の民はただ、仲間が心配だっただけなのに。」
「…例えそうだったとしても、シルフの国民を何百人も殺してしまったからな。」
「そうね。…でもシルフ王、明らかに可笑しい。以前のシルフ王ならあんな命令絶対にしないはず。」
「…君は、王の命令に対して疑問を抱いてるの?」
シドの質問にフィナは彼の顔を見て考え込む。
確かにシルフ王の言う事に疑問なんて持ちたくない。
しかし、ずっと考えてた。
突然国民の納税に厳しく、軍事力を強化して今日より開戦宣言をするなんて。
子供の頃に国の良さを私達に教えてくれた国王からは、想像出来ないくらい独裁的な性格に変わった事に未だ信じられなかった。
「あのハイドって男が来てから、国王は変わってしまったと私は思ってる。それにあの男ー」
そう言おうとした時、扉の向こうからノックの音が聞こえた。
「シド様。至急ハイド様からお呼びがあります。ご案内致します。」
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