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そう、フィナが継承した"陽"の力は時間を操る以外にも物質や生物を分解する力があり、月の民との相性関係は断然に上である。
先程の地面の中に隠れた月の民が仕掛けた罠の所へ歩いていると早速地面がフィナの周りを囲う様に襲ってきた。
しかし、フィナは微動だにせず襲ってきた周りの地面を分解の力で吹き飛ばす。
吹き飛ばした地面の下には先ほど攻撃を仕掛けた月の民が隠れており、姿が見えたと同時にフィナに向かって襲ってきた。
シュパッ!
月の民がフィナの横を通過した次の瞬間、月の民の喉笛に切り傷がゆっくりを開き、血飛沫が噴き出した。
「何だ、今の…見えなかっ…」
大量の出血により月の民はそのまま倒れてしまう。
「…ごめんなさい。…ごめんなさい。」
後ろを向いた状態であるがゆっくりと言葉を発し、その場を後にしようが近くの建物の中から小さな月の民の子供3人がこちらを覗いていた。
酷く怯えた目でフィナの事を見ていた。
当然よね、目の前で自分達の仲間を殺したのだから。あの子達からすれば私は大量殺人者。先程も他の魔導士達と一緒に大量の人を殺してしまったわ。
でも、せめてあの子達の様な幼い子だけでも。
そう思ってフィナは剣を鞘に入れ、子供達の近くへ行った。
「あなた達、ここを出てはダメよ!…私の様な最低なクズに言われても腹が立つと思うけど、もうこれ以上は死なせたくないの。急いで建物の中に隠れ…」
それと同時にフィナの目の前で話してたであろう子供3人の上半身が一瞬で消し飛んでしまった。
「…えっ?何…で…」
「おやおや、お取り込み中でしたか?」
横を振り返るとそこには黒いローブを被った長身の男がいた。
「今のは月の民の子供ですね?隠れろと聞こえましたが、あなた今何をしようとしてましたか?」
ローブから見える紫色の眼光がフィナを睨みつけた。
一瞬ゾクッと背筋が凍るフィナ。しかし、それに怯まず質問をした。
「あ、あなたは魔導士なの?」
「そうか、自己紹介が遅れました。僕はネル・ナイトフォースと言います。一応この戦争に招集された黒魔道士です。」
そう、これがフィナと黒魔道士ネルとの初対面だった。
「黒魔道士。そんな奴を大国が招集したなんて考えられないんだけど。」
「それは考えても仕方がない事でしょう。それを決めるのはあなたではないので話を逸らさないで下さい。あなたは今、月の民の子供を匿おうとしましたね?それは王に対する反逆でしょうか?」
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