第17話 戦争による代償

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「…あの子達はまだ小さかったから無意味に殺す必要はない。だから捕虜として生かすつもりだったのよ。それを反逆と捉えるなんて早とちりでは?」 「そんな指示は出てないですよね。小さかったから?関係ない。作戦通りに動けない人は戦争には必要ありません。…これは上に報告する必要がありますねぇ。」 私の目線に合わせるかの様に長身の男は体を右斜に傾けながらニヤケ顔で言ってきた。 悪意のある目とその言い方に腹が立つ。 しかし、これ以上こいつと話してても仕方ないか。 「…次は躊躇しない。力の限り戦うわ。」 そう言って私は別の場所に向かう為、黒魔道士から背を向けて別方向に進行した。 「…あれが僕と同じ"継承者"か…。」 黒魔道士ネルは走りゆくフィナを見ながらそう呟いた。 各地では月の民殲滅の動きが更に過激さを増していた。 作戦本部の指示で前方殲滅チームは一度後退し、北の大国が東の大国から盗んで開発したと思われる軍事魔導兵器が導入された。 その軍事魔導兵器とは数人分の魔力を注入し、増幅した魔力を撃ち放つ大砲である。 大砲を放つ為の導火線や砲弾などは無く、魔力を注入する為の水晶が大砲とは別にあり、水晶玉に魔力を注入する事で高火力の砲撃が放てるという仕組みだ。 「このあたり一帯を消し飛ばした方が戦いやすいだろう。火属性の魔導士達は魔力を注入しろ!…砲撃開始!」 作戦本部の上官が指示を出すと火属性の魔導士20人くらいが水晶玉に手をかざし、魔力を注入した。 そして溜まった魔力は高火力の砲撃として目の前の建物に放たれた。 放たれた事によって辺り一帯は火の海と化し、建物内に隠れていた月の民達の大半は焼死体となってしまった。 運良く生き残った月の民も居るが隠れる建物がなくなった事により、待機していた殲滅チームが容赦なく月の民を銃殺、斬殺していった。 そうやって軍事魔導兵器を使用しながら大国側にとって弊害となる建物を破壊し、月の民を容赦なく殲滅していった。 しかし、数百人程度の月の民はどういう理由か分からないが捕虜として収監用の馬車に乗せられていた。 そして殲滅戦は呆気なく終わりを迎え、私達シルフの魔導兵や招集された魔導兵達はそれぞれの役目を終えて帰りの馬車に乗って故郷に帰るのであった。
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