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月の民殲滅戦後、フィナ達魔導兵は今回の殲滅戦で無くなった戦死者の弔いの儀を行う為、王宮の広間に集められた。
普段は約500名程いる魔導兵も、ここに残っているのは約200名程度。
半数以上の戦死者が出ているのだ。
たった1日の殲滅戦でこれだけの人が亡くなった。
以前まで狭く感じた広間はとても広く感じ、まるで戦争によって失った自分の心の虚しさを表してる様だった。
そして、そこにはシドが居ない。
最初はただ風邪でも引いて欠席してるのだと思ってた。いや、思いたかった。
何故なら、戦死者の名前が書かれた慰霊碑にシドの名が刻まれていたからだ。
私はその場に膝から崩れ落ち、思わず顔を手で覆いながら涙を流した。
そしてシドとの数々の思い出が頭の中で駆け巡る中、あの日の最後の言葉が頭の中に響いた。
ー僕は君とならこの国、いや世界を良い方向に変えられると思ってる!
ーこうして僕らが出会ったのは陰陽魔術だけじゃない!運命だと思ってる!
真面目で正義感の強いシドの最後の言葉。自分の境遇がどんなに悲惨であっても道を踏み外す事なく本気でこの国を良くしたいといつも考えていた。
そんな人の最後の言葉は本当に彼らしくて好きだった。
けれど私は何も返事を返せなかった。
生きて帰還したらまた何気ない日常が戻って、いつかあいつに返事を返せば良いやくらいにしか思ってなかった。
そんな浮かれた気持ちになってた自分が腹立だしい!
けれど、ようやく私は理解したのかもしれない。
戦争で命を奪い奪われるという事はこういう事なんだと。
当たり前に側にいた人が簡単に居なくなる。
顔を見たり声も聞く事が出来ない。一緒に買い物行ったり、食事したりする事も。
何より、あいつの返事を返せないまま後悔しか残らないのが一番辛くて悔しくて…復讐してやりたい気持ちだった。
でもそれは月の民の人達も同じ気持ちなのだろう。
私だけが被害者では無い。けれど、この気持ちがとてつも無くやるせ無かった。
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