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すると店主は突然私の頭をポンと叩く。
「ずっと一緒だった奴が居なくなった現実を受け入れるなんて、俺の歳でも難しい事だ。お前が立派なのは分かってるけどまだ年齢は子供なんだ。って、俺が言ったってお前を楽にしてやる事は出来ねえかもだけど、ここに来ればジェラートのサービスくらいはしてやるよ!」
店主は元々少し強面だけど、強面の表情とは思えない笑顔でみんなを明るくする。
店主の言葉を聞いていつの間にか涙が頬を伝った。
「私には、悲しむ権利なんてないよ。多くの罪なき命を奪っておいて自分だけ悲しむなんて…あまりにも自己中心的過ぎて吐き気がする。私は…人として取り返しのつかない事を…」
涙を隠す為に両手を顔で隠しながら出そうになる鼻汁を啜る。
「…本当に、戦争っていうのはどうしようもないよな。継承者だなんて立派な言葉で崇められてようが、こんな小さな子供に重過ぎる責任乗せやがって…。」
「フィナ、お前の背負った重荷は俺が代わってやる事は出来ないけどな、俺にとってお前の存在はとても大きい。継承者だからではなく、フィナという1人の子供としてな。」
「だから、お前はここに居て良いんだ。いつでも来てくれよ。」
ポンポンっと店主はフィナの顔を見ながら肩を叩いた。
魔導兵になってから今まで私は継承者というレッテルのせいでその責任を全うする為にどこか気を張っていた。
魔導兵として、国の為、強くならなければ。守れる人にならなければ。
そんな思いから自分が子供だという感覚はいつの間にか無くなっていた。
「ありがとう…おじさん。」
「あぁん?32におじさんは無いだろ〜?」
年齢アピールしてるのがもう…。
でも、ちょっと救われた気がする。
私の事をまるで娘の様に気に掛けてくれる店主がとても暖かく感じた。
人を殺した罪は消えない。でも、自分を認めてくれる存在がいるだけで戦争を生き抜いた甲斐があったと思える。
でも、たとえ私たちシルフが諸悪の根源であったとしてもシドが死ぬこんな結末は納得いかないと同時に心の底では思っていた。
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