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月の民殲滅戦から2年。私は16歳になった。
ちょうど超日食(ノヴァ・エクリプス)によって悪魔が出現する数日前だった。
相変わらずシルフは納税の取り立てにより、国民の生活は苦しくなっていた。
そして超日食が起こる20日ほど前、王の側近である宰相のハイド・スペクターが外出していた時があった。
理由は聞かされていないが、私はこの時に王と話をする為に王室の扉まで来ていた。
全ては、あのハイドが来てからおかしくなった。だから、少しでも話をしてみたい。
しかし、私は扉の前に立っていた魔導兵の人達に止められた。
「王に会わせて下さい!話があるんです!」
「ダメです。いくらフィナさんの命令でもここは通すなとハイド様から言われてます。」
ハイドが王の側近になってから今まで誰かと対面して話をしていないのはあまりに不自然すぎる。
必ず側にハイドが付いていて、あいつが居なくなった途端にここで閉じこもってるのも何か裏があっての事だと思う。
それを知る為に私は強行的に王と話をしようとした。
「そうですか。では、仕方ありませんね。」
そう言って私は魔法で時間を遅くした状態で目の前の魔導兵の頚動脈を手で強く打ち付け気絶させた。
そして、扉を開けて王室に入った私は玉座に座る王の所へ駆け寄った。
しかし、側にいた魔導兵複数が王の目の前まで近づいたフィナを止めに入った。
「シルフ王!…離せ!私は、貴方に話があります!どうか、私と話す機会を…」
「ふざけるな、フィナ!お前、扉前にいた兵をどうした!?まさか、危害を加えたのでは?」
「王よ!目を覚まして下さい!貴方は以前、この国の良さについて私とシドに教えて下さりましたよね?しかし、今のこの国の現状を見て頂きたい!この様な国民の疲弊した表情を見て良い国だと胸を張って言えますか!?これが、貴方が言って下さったこの国の良さなのですか!?」
「いいえ!以前の貴方ならそれを良い国とは言わなかった筈です!貴方がこうなった原因は…」
「それ以上口にするな!反逆罪になるぞ、フィナ!」
そう言って取り押さえてた魔導兵はフィナの口を縛り、何も喋られない様にした。
フィナはモガモガと口を動かそうとしながら暴れており、成長して大きくなり更に力を付けたフィナを数人掛かりで必死に押さえつけた。
そして、目の前の玉座に座る王がようやく口を開いた。
「…ふぁぁ〜。…パンが…食べたいなぁ〜」
その言葉にフィナは暴れるのをやめ、同時に魔導兵達もそれに合わせて押さえる力を抜いた。
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