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意味が分からなかった。…と言うよりは、そもそもフィナの言葉自体が王には届いていないのが分かった。
フィナの言葉は現在シルフの国民が思ってる心の叫びでもあり、その思いを代弁してくれた様なものだ。
当然他の魔導兵達も同じ様に思っており、だからこそフィナがハイドの事を口にして反逆者にしない様に制止してくれたのだと今なら分かる気がする。
しかし、今の国王の反応はどう見てもフィナの言葉に対して何も響いていない。
まるで魂がここに在らずといった状態だった。
「フィナ、…もう、話す事は無い…よな?」
「…はい。」
「では、もう退出しろ。多分…俺達がここで今何をしていたかも、時期に忘れるだろう。だから…速やかに、ここを退出しろ。」
フィナから見る角度だと今言った魔導兵の表情は見えないが、声が震えていた様な感じであった。
それは今の王には何を言っても響かない事を、ここに居る魔導兵達は理解していたからである。
「…失礼しました。」
そう言って王室を出た私はトボトボと廊下を歩いた。
王室にいた魔導兵の言った通り、王は私が話した事など覚えてなかったようだ。
それもあって、私が働いた無礼な行為は王室にいた魔導兵の計らいもあり、不問としてくれた。
そして超日食があった日、世界では未だかつてない大きな事件が起こったのだ。
キュアリーハートで突如起こった悪魔の出現。それによる緊急事態宣言だった。
出現した悪魔は恐ろしい強さを持っており、たった一夜でキュアリーハートの人間は殆ど悪魔に惨殺されたらしい。
しかも恐ろしいのが、悪魔に殺された人間は新たな悪魔として甦り、また別の人間を襲うという事だ。
キュアリーハートの人間が殺され、その近くの小国は既に悪魔の被害に遭っていた。
他の大国はどんな手段を取っているか知らないがシルフはその情報を聞き、悪魔の被害を減らす為に他国との外交などを最小限に抑えていた。
外交を抑えると言う事は経済の流れが大きく変わるということであり、国民の生活は更に厳しくなる事を意味するのである。
超日食があった数日後、ハイドは帰国すると再び国王の元で宰相の役目に戻った。
ハイドが戻った事で国王は再び独裁的な発言をし始めたのだ。
…間違いなく、ハイドが国王を操ってるに違いない。
私はそう確信したが、その原因を突き止める方法が私には思い浮かばず、そのまま時間だけ流れた。
そして始まるのだった。
私が何故、ネル・ナイトフォースという男に憎悪と復讐を持つ様になったのか。その最悪の事件がそれから2年後、私が18歳になった時に起きたのだ。
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