25人が本棚に入れています
本棚に追加
数ヶ月ぶりの国内の景色。
風景自体は変わらず、側から見れば人々も普通の日常を送ってる様に思える。
けれどあの頃の様な和気藹々とした雰囲気ではなく、只々その日常を淡々とこなしてるだけの様に見える。
これは思考を奪われた事による影響だと思われるが、そう確信を得た理由は他にもある。
物価の上昇や税金の上がり方が以前とは比べ物にならない事。
以前なら反対意見(勿論処罰される対象)もあったが、今では以前より数倍上がった税に対して不満に思ってる素振りすらない。
その不満さえも感じられない思考をハイドに与えられたのだろう。
そう思って私はいつの間にか無意識にいつものジェラート店に立っていて、そのまま中に入った。
「いらっしゃいませ。」
店内の雰囲気は変わりない。やっぱり、おかしいのは店主とお客さんか。
お客は全員ハイドによって操られている状況であるが、国の経済を円滑に回す為には定期的に店で買い物などをさせてお金を落とさせていた。
店内はいつも賑わっているはずなのに、ジェラートを食べる人々はとても静かで、目の前の物に集中しながら黙々と食べていた。
「おじさん…久しぶりだね。何か、少し変わった?髭も剃ってるから誰か分からなかったよ。」
「…ご注文は何にされますか?」
「あ、そうだったね。…じゃあ、このバニラ下さい。」
「畏まりました。お買い上げ頂きありがとうございます。」
驚くほど礼儀正しい接客は今までの店主からは想像出来ないが、淡々と機械的に仕事をしてる事にフィナは恐ろしく感じた。
バニラのジェラートを貰ったフィナは店から出てバニラを食べた。
これ以上この店に居るのは気色が悪くて耐えられない。
ガサツだけど、いざと言う時にはお客さんの気持ちに寄り添える良い人だったのに。
あんな機械的な人間になるなんて…あんまりじゃ無いか。
ハイドに与えられた思想によって、反抗する国民は居なくなった事で定期的に店に金を落としている為、シルフは今までよりも経済が安定していた。
けれど、それじゃまるで奴隷の様じゃないか。
許せない。ハイドと、ネル・ナイトフォース!
最初のコメントを投稿しよう!