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体育館を出て本校舎へと歩きがてら、パンフレットをぱらぱらと捲ってみた。
多彩な部活動。ゴシックの太字がうるさい。
華々しい活動を高らかに綴った、目を射るような美辞麗句は斜め読みで素っ飛ばし………奥付の前に掲載されている校内の地図の確認が取れたので、畳んで突き返した。
「萬は部活動………」
決めたのか?は咄嗟に飲み込んだ。
「どんな部でも卒なくこなせそうだな」
「そうでしょうか。中学時代には陸上部でしたが」
「意外だな」
「そうですか? でも貴方様が言うのならばそうかもしれませんね。
天神橋高校は部活動入部必須の校風ですが、今は帰宅部に入部希望です」
「部活が盛んな校風だから、帰宅部なんて認められないだろ」
「この校風が好ましくて入学したのですが、何だか面白いことが起こり過ぎていて、部活動への興味がなくなってしまいました」
女の子というものは、こんなにも頬を紅潮させて惚気るものなのか。
天にも昇る気持ちとは正にこのことだ。
「同じ部に入部すれば良いだろ」
「となると運動部は除外ですね。練習量や拘束時間の多い部や同好会も除外されます。
………あ。大変なことになりました。
全滅でした!」
「ここの放送部なんて適当そうだし、楽しそうに見えるけどな」
「そうでしょうか。放送の全国大会があるそうですし、この学校の放送部は、アナウンス部門でも、ドラマ部門でも過去に優秀な成績を収めているそうですよ」
歓迎会では、そんな事も言っていたか。
「………ここ数年は優秀な成績からは遠ざかっているそうですが」
「流石の記憶力だな………っと、放送室に到着」
背後から、手を強く握られる。
「もしも差し出がましいことを申し上げるようでしたら、すみません。
犯人がもうお分かりになったのですか?」
「目星だけの千里眼だけど」
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