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放送室に到着。
ノックする。
「やあ。放送部の見学かい?」
癖毛の放送部部長が俺たちを招き入れた。
「少しだけでも構いませんか」
「おや。入学式の新入生代表君も?」
「はい。私も少しだけ」
三年生部長と五人の放送部員。
「入って入って」
「いいえ。こちらで。
放送部の部長である先輩に、個人的にお伺いしたいことがあって。
………新入生歓迎会のスポットライトについてなのですが」
「そうか。それなら、ここで。もしかして、君もその口?」
頷く千年。
放送室の扉が後ろ手に閉められた。
不幸の匂いをさせて、癖毛の部長が半眼に腕を組んだ。
その表情は硬かった。
『何だかとっても不幸そうですね!』
楽しそうに耳打ちする千年。
それ、聞こえているぞ。
「先輩にお尋ねしたい事があります」
「何だい?」
【質問一回目】
「スポットライトが壊れたとの事ですが、スポットライトの調整についてお詳しい顧問、生徒って多いんですか?」
「前の顧問が詳しかったけどね。今の顧問はてんでダメだ。うちの部員と生徒会の方がよっぽど扱いを理解している始末だが、うちの部員も生徒会の役員も、伝統的に役割分担が決まっていてね。二年生にはこの春から教えていこうってところだよ。
僕に言わせればね、細かい調整や設定が出来るから、あのスポットライトの扱いはとても難しいものなんだよ、あんなスポットライトであってもね。だから教える際にも慎重なんだよ。
なあ………それにしても、何であのスポットライトが気になるんだい?」
「すみません。ちょっとした好奇心です」
「変わってるね。それじゃ、この辺で………」
【質問二回目】
「今日、放送部の三年生は先輩お一人なんですね?」
「そうなんだよ。聞いてくれよ。
一人だと大変だって言うのに、他の面子が受験がどうので急に辞めちまってさ。
放送部三年生は俺一人だぜ。
それで、二週間前リハは体調不良の不参加で最悪だよ、ほんと。生徒会の三年生が補佐してくれたけれど、アイツは結局、こっちの仕事なんて把握しちゃいないんだ。変な話、俺は奴隷だね。
ったくさあ。
俺にだって受験があるって言うのになあってねッ!」
「先輩は不幸なんですね!」
「え?」
千年を後ろに追いやって、話を戻した。
「あ、ええと、色々大変なんですね。では、最後に一つだけ………!」
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