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「他の部活動も華々しい成績を出してしまったのですから、削る他にないでしょうね。ですが、例年、同じように成績を出しているチアリーディング部には納得がいかなかったのでしょう。
結果、前年度の予算会議では、チアリーディング部が現状維持を押し通した結果となり、他の運動部には来年に持って来るとでも約束を交わしたんです」
「予算会議は揉めるのが通例だが、そうだな、あそこの部はOGが強かった。私たちの先代は丸め込まれた教員たちの力に負けてしまったんだ。少年たち、新一年生には情けない限りだがね」
「今年も必ず揉めるのは目に見えていたはずです。
しかしこれ以上、チアリーディング部に予算を明け渡せば、求心力の低下は免れない。以降の会議を更に不幸な方向へと持っていく悪循環を生むでしょう。かといって、チアリーディング部との不和もまた、避けなければならなかった。そう考えた先輩は、チアリーディング部にだけ特別な一回限りの便宜を図ったんです。それが、今日の新入生歓迎会です。
新入生歓迎会でチアリーディング部だけが目立つよう『スポットライト演出』の便宜を図る代わりに、以降の予算削減についての譲歩を求める打診を、リアリーディング部に行っていたのではないですか?
俺が穂高生徒会長に聞きたかった【二回目の質問】お答え願えますか?」
「少年。君にはそう思えたのか。あの茶番は」
柔和な美女は、その大仕事を茶番の一言で片付けた。
茶番というからには、茶番でしかなかったのだろう。
「はい」
「だったら君の思う通りに見れば良いさ。少年。
この天神橋高校の生徒らしく、自由な気風たれ。
私にはその権利を侵す権利はないのだからな」
「………大変、感謝します」
ごん、と金属音。
扉に向かって、細い肘を打ち付けた音。
「これ………壁ドンですか。萌えませんが」
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