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………
終わった。
特にすることもなし、廊下を歩く。
雷雨は止んで、曇り空になっていた。
「………とまあ、こんな感じなんだが………」
「貴方様の解答は正解かと思います。期待以上でした」
「おう」
「いつから、スポットライトが原因だと気付いていたのですか?」
「挨拶を盗んだ『犯人』を捜して欲しいと依頼されたところから。
萬が自分自身で答えを導き出せない理由から考えたんだ。
挨拶の時と、それ以降とで、変化したものは天気だけだ。
となれば、天気によって変動する条件で、左右されるものを探すしかないからな」
「そうだったんですね」
時間は午後三時前。
喜べ、我が左目よ。
「『氷の女王』だっけ。あの会長は怖かったけどさ」
「穂高先輩はリーダーシップを取るのが得意だそうで、乱れていた学校の校風を正した過去があるとかで、この天神橋高校でも穂高先輩の手腕で多くのイベントで来場者数が増えたり、部活動が盛んになったり、偏差値が上がったのだとか」
「そこまで言うか」
「運動部や文化部が優秀な成績を出すようになったのも、穂高先輩のお陰と思う人も多いそうで、学校内でとても有名な方なのだとクラスのお友達から聞きました」
「まるでスケ番だな」
「女番長………そうですね、その言葉の代わりに『氷の女王』だったのかもしれません。手腕は確かで人望にも厚いと同時に、その一方では強権的な人のようですね。ですが、心からの想い人がいる女の子だと思えば、そう悪い人でもないのかもしれませんね」
「え。いるの? それ、いつ聞いたんだ?」
ショック。
「聞いていませんよ。でも、先程の様子からして、どう見ても、放送部の部長さんと穂高先輩、そういうご関係でしたよね?」
「うぇえ?」
目が悪い人間には見えない紅い糸でもあるというのか。
俺にはそんなの、これっぽっちも分からなかった。
「今回のスポットライトの件についても、恋人の危機を知った放送部の部長さんが、進んで穂高先輩に手を貸したのだと思います。そうでなければ、あんなに『誇らしそうな不幸』は、そうそう味わえません!」
「味?」
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