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「秘密倶楽部の活動をするに当たって、部員を確保せねばなりません」
「部員、か………」
「大神様の不幸をお集めするお力を、どうぞお示し下さいませ」
恭しく頭を垂れる。
「『元』だ。元・神であって、フツーの生活を面白おかしく過ごしたがっている」
「フツーの生活を面白おかしく過ごしたがっているのに、私とお喋りするんですね?」
人の不幸を、甘く、舐めとる猫の目が笑う。
「可愛い女子とお喋りするのが全男子高校生の夢だろ」
「現実から目を逸らした妄想、とでも訳すべきでしょうか」
「相互不理解だ。俺は現実的に女子とお近付きになりたいんだ」
「それ、本当に全男子の夢なのか、冷静に考えたことはありますか?」
「俺は至って冷静だ」
「現実と非現実。どちらが理想に近いかを考えれば、答えは一つです。不服ではありますが、こんな欲望だらけの現実の女子よりも、美化されて完璧な状態になった妄想の女の子の方が、理想的な相手………私の敗北を認めざるを得ません」
「誰に負けたんだ」
「ですから、自ずと『非現実美少女とフツーで面白おかしい夢のような毎日を過ごしたい』が全男子高校生の夢………その模範解答となるのではありませんか?」
「現実の苦さを含めて、フツーの青春って呼ぶんだぜ!」
きょとん。
「………陳腐で想像通りのしょっぱくて青臭いサラダのような味の『不幸』ですね」
「そうかい。お粗末様」
柄にあわない言葉選びで、失敗した不幸を塩っぱそうに見詰める千年。
味わって頂けたのならば、その結果のみ、大吉として受け取っておこう。
「倶楽部活動としての体裁がなければ、倶楽部活動は存続不可だとさ」
「それは困りました。人集めをしなければなりませんね」
「人がそう簡単に集まるのかね」
「不幸を集めるのなら、不幸な人も集まりますよ」
不幸を集める、神通力家系の俺。
不幸を食べなければ生きられない、人魚家系の千年。
俺は差し詰め『おさんどん』か。
「集まるったって、部室もないんだぞ。
何処に誰が何をもってして集まるんだ」
施錠された屋上に続く扉の前、二畳くらいの踊り場にハンカチを敷いて、ちょこんと体育座りしている千年が拳を握りしめた。
「部室もクラウド化の時代です」
カラスの鳴き声。
運動部員のかけ声。
新入部員が奏でる拙い楽器の音色。
平和だ。
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