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どういう風の吹き回しだ?
それを見るや否や千年は目にも止まらぬ速度で入部届に手を伸ばす。
が、ヘアピンは書類を渡すまいと千年を躱(かわ)した。
「だめえ!」
「何故ですか?」
睨み合う両者。
まるで小動物と海蛇だ。
「一時(いっとき)待っちゅてたぼれー【待ってください】!」
「明さんは秘密倶楽部に入りたいのですよね?」
「秘密倶楽部って……色んな人のために動いてくれる部、なんだよね?
えっと、それで、困っている人とか助けてくれる、的な?」
返答に困った俺の代わりに、千年がありもしない偽の目的をすらすら述べ立てた。
「人の秘密裏に解決して欲しい問題解決をするための部活動なのですから、明さんのお考えで相違御座いません」
「あのね、わんの『お願い』を聞いて欲しいっちゃ!」
交換条件だと言いたいのか。
「良いでしょう。私たちも倶楽部活動としての仕事を探していて、人材の募集についても新一年生で、この『友達がいない』部長以外の仕事を何もかもやってくれる無神君のクラスメートが入部してくれるというのであれば渡りに船、漁師に人魚。協力出来る範囲でお助けします」
「友達が少ないのは認めざるを得ないが、友達がいないというのは語弊があるぞ」
「あら。私は恋人であっても友達ではありませんから、貴方様には友達は一人もいないのですよ。やーいやーい、リア充ぼっちー」
心が折れそうだが反論は出来なかった。
「はげはげぇー!
ありがっさまりょうた!【ありがとう】」
「ってか、千年……何を勝手に」
「貴方様は私のものなのですから、私の困りごとは貴方様が解決して下さいます」
駄目だった。
ここには日本語が通じる人間がいない。
互いに意味が通じ合っていないのに契約済となる。
何やら面倒事に巻き込まれてしまった。
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