39人が本棚に入れています
本棚に追加
頷く金髪碧眼の眼鏡。
夕陽が差し込んで彫りの深い顔に、憂鬱が映し出される。
美形の青年だけに、黙ってさえいれば所作までもが絵になるのだが。
「Ich vergesse nie unser erstes treffen」
「うんうん。そうだねー!」
「千年………奴は何て?」
「分かりません」
首を左右に振る千年。
「あげー。『ちゃー会いたいっちゃ』ってさ!」
会いたい?
誰かに会いたいのか?
「つまり、その『ローレライ』だっけ?………を探せば良い、のか?」
芝居がかった低い声で金髪眼鏡が低い声で何やら語り始めた。
「Ich sehe nur dich!」
「『余がかの少女に相見えしは、来日した日の春の昼下がりであった』」
ヘアピンチビがやけに大仰な訳を付ける。
まるで舞台俳優の台詞に音声字幕が重なっているようだった。
「………Ich brauche dich」
「『ゲームセンターに興じ、我らは食事を共にした』」
「Megumi sollte Deutsch studieren……」
「『彼女と過ごした時こそ、我が人生最良の時であった事よ』」
「meine Frage ist neu ein」
「『なれど余が如何にか口説き落とせども、一言も口を開かで去りにけり』」
「Wo wird diese Person sein?」
「『かの少女は連絡先も名も明かさで、我ら放課後に会えりもありける』」
って、お前は戸田奈津子か!
映画字幕だってそこまでトンデモ意訳しないだろ!
最初のコメントを投稿しよう!