始まりは砂だった

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時にU.C.0079年。 俺達は中央アジアのタクラマカン砂漠に居た。 見渡す限り砂の世界。 砂漠を見た事が無かった俺達スペースノイド。 そして、そんな俺達スペースノイドが起こした戦争。 そうだ。 俺達スペースノイドが、地球圏の安定した秩序を崩壊させたんだ。 この砂漠にも、俺達が起こした戦争の傷跡が至る所に散在している。 そして……… 『こちらヴィリー。 敵影なし。 ったく…! これじゃ靴下の中まで砂だらけになっちまうぜ』 緑色の巨人。 鋼鉄のボディに覆われたその巨人からは、溜め息にも似た声が漏れてくる。 一歩踏み出す度に大地が揺れ、軽くて黄色い砂が巻き上げられる 『気を落とすなヴィリー。 司令部の連中は、俺達に砂遊びをさせて喜ばせたいのさ。 でなきゃ、こんな何も無い場所を哨戒ルートに選ぶか?』 もう一体の緑色の巨人が、愚痴る様な素振りで歩いて来る。 砂の着いた巨大なバズーカを構える姿は、巨人と云うよりも悪魔に近いかもしれない 『そりゃそうだ。 隊長も司令部の連中に好かれてる様ですね』 ヴィリーの言葉に、俺は少しだけ笑ってしまった 「もし仮に気に入ってくれてるなら、新しい玩具の一つも回して欲しいもんだ」 俺の言葉に、二体の巨人から笑い声が漏れる。 巨人の盾には部隊章と番号が描かれていた。 鎖と首輪を粉々に噛み砕いた血塗られし犬。 北欧神話に登場するガルムを象ったエンブレム。 それが巨人達の部隊章だった。 第6MS小隊 通称「ガルム隊」 彼等は緑色の巨人 「ザクⅡ」 を乗機とし、数々の作戦に参加して来たベテランパイロット達だった。 小隊長のマルティン・ブリュワーズ少尉 トニー・ヘフナー曹長 ヴィリー・ブレスデン軍曹 彼等三人は、エンブレムのガルムに恥じないパイロット達だった。
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