第1章

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 政宗が、図面を指差すと、半透明がその箇所をじっと見ていた。 「カルシウムが無ければ、流動鉄の資料をあげるよ。重いけど丈夫だ」  半透明に、データを送信してみると、近くの鉄を取り込んでいた。 「君は、誰と喋っている?」  振り返った荒川が、半透明を見つけてしまった。 「これは、人造人間なのか?」 「そうです」  人造人間は、データを取り込み、進化するようになっていた。母体は、半透明のぶよぶよだが、次第に人間に近付く。 「君はもしかして、分散したデータを取り込み、一つとするために生まれたのだね」  半透明の水には、無限のデータ保存機能があった。半透明が頷いていた。どこが顎なのだか分からないが、頭がぷるんと揺れる。  そうか、ミラレスは滅んでしまったが、データが生きていた。 「では荒川さん、質問も無いようなので、帰ります」  政宗には銃口が向けられていたが、半透明が忍び寄ると、銃に絡みついていた。 「待ちなさい、この半透明の制御方法はあるのかな?」 「そのデータは、まだ発現していないようです」  そのまま政宗が歩き去ろうとする。 「それから荒川さん。俺、家族を皆殺しにされたら、地球を皆殺しにしますよ」  既に皆殺しの方法も、幾つか思いついた。江戸崎の情報もあるので、後で栽培してみよう。 「それは楽しいね」  睨み合ってから、ふと思い出した。 「埋葬したいので、胎児の遺体を貰えますか?代わりに、破損していたデータを捕捉しておきますよ。何か所か図面が欠けていた」 「いいだろう」  宝来が殴る意味も分かる。荒川は、いつでも、政宗も、政宗の家族も殺せると踏んでいる。殺すということに躊躇がない。  これは怖い相手であった。  冷蔵されていた胎児を受け取ると、政宗は大事に胸に抱いた。産まれたばかりだというのに、母親からも離され、寂しく不安であっただろう。 「んん?」  政宗が胎児の頭をそっと撫ぜると、電気信号を発見した。胎児の脳は、悪夢を見ていた。小さな波形であるが、脳が完全に死んではいなかった。 「どうした?」  ここで嘘を言ってもバレるだろう。 「脳はまだ死んでいません。データ、全て取れなかったのでしょう。接続しますか?」  ついでに、胎児の悪夢も終わらせてあげたかった。 「……、機器、すぐに準備しろ!」  機器、かなり旧型であった。政宗は、あったシステムから機材を勝手に抜き取ると、改造を加える。
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