第1章

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 ブーヨの皮膚が半透明から、人間の皮膚のようになってきた。頭がどこかは分からないが、天辺に毛が生え、手が生えてきた。次第に人間の体になってくると、裸のまま椅子に座った。政宗は、自分の上着をブーヨに渡したが、下半身は裸のまま、成人男性の形態になったので、変質者のようになってしまった。  見かねた荒川の部下が、作業服を与えていた。 「ブーヨなのか、ヒカリなのか?」 「どちらでもあり、どちらかではありません」  それでは新しい名前を考えなくてはいけないのかと、政宗が顎に手を当てる。 「ブーヒ…」 「名前はヒカリのままでいいです」  せっかく名前を考えたのにと、政宗が悔しがる。 「ヒカリ、記憶はあるのか?」  ヒカリは頷くと、機械に続きのデータを出してみせた。 「荒川さん、ヒカリはデータを取り込み、収集します。大切にしてやってください」  埋葬はできなくなってしまったが、これでも良かったのかもしれない。ヒカリは生きることができる。 「本当に面白い。やはり、欲しいかな…天然体」  荒川の言葉に、部下が政宗の前を塞いでいた。政宗が強硬突破しようと身構えると、荒川が首を振っていた。 「面白いから、少し、放し飼いにしておきますよ。このヒカリ?は危険なので、地球軍が保管しますけどね」  荒川の言葉に、部下が出口まで案内してくれるようだった。放し飼いなど、かなり失礼な言い回しであったが、そこは政宗も我慢していた。  しかし、分離したヒカリが、卵大になり、政宗の肩に座っている。これは、どうしたら良いのだろうか。  政宗は、兵士に出口まで案内されたが、そこは、民家どころか何もない場所であった。 「どうやって、帰ろう…」  茶屋町を呼んでみるか。 「送りますよ」  兵士がジープに乗せてくれた。 「あの、荒川幹部にたてついて生きているのは、本当に珍しいですよ」  荒川は、軍での役職についていなかったが、権力は持っていた。誰も、逆らう人間はいない。 「やっぱり、怖い人なわけね」  もう関わり合いたくはない。  途中ジープのハンドルがおかしかったので、政宗が整備し、ついでに自宅まで運転していた。 「ありがとう」 「こちらこそ」  和やかに地球軍の兵士と別れたが、自宅の玄関前に茶屋町が立っていた。 「地球軍ですね…」  腕を組んで政宗を見つめる茶屋町は、あきらかに怒っていた。声のトーンが低く、笑顔もない。
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