第1章

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 政宗が、時宗と真誓を抱えたまま、リビングに行く。政宗は時宗をイスに降ろすと、端末を立ち上げた。 「これが、俺の親父、お前らの爺さんが設計した機械だよ」  図面を見せると、時宗と真誓が真剣になっていた。 「爺ちゃん、生きていたのだよね、この図面を描いているときは」 「そうだね」  設計している父親は、政宗も見たことがなかった。リビングでは、子供と遊ぶ優しい父親だった気がする。でも、遊びの中で、父親から設計の基本を学んだのかもしれない。  政宗のおもちゃはいつも、父親の試作品だった。設計図を渡され、失敗点や改善点を話し合っていた。政宗は、それが楽しくてしょうがなかった。  全ての可能性が、図面の中にある。全てを見据えて、検証しなくてはいけない。  失敗は幾つもしたが、不思議と挫けたことは無かった。政宗の父は、夢も半ばに死んでしまったが、こうやって図面で再び出会えた。 「お前らの爺さんは、姿は上原とそっくりだった。でも、上原の中身は母親似だけどね」  政宗は、もっと沢山、父親と話しをしたかった。だから今、政宗は、代わりに時宗と話しているのかもしれない。 「図面で、爺ちゃんと話しをしているみたいだよ」  時宗と、真誓が図面に話しかけていた。 第六章 勝敗の行方  臓器は人工の利用を可とする。星の子供の発表で、狩りは収束して行った。地下施設にも警察の捜査が入っていたので、壊滅するのも時間の問題ではあっただろう。  赤ん坊の養子は、未解決であったが、弁護士が間に入って進んでいるという。星の子供の信者に、今回、産まれた子供が幾人か養子に入っていた。悪意はなく、本当に子供が欲しくて、赤ん坊を見て、頼み込んだらしいと警察が教えてくれた。養子の件がなければ、赤ん坊は殺されていたらしい。  ユカラの悪夢のなくなり、事件は解決したようにみえた。ユカラも情報料という名目で、代金を支払ってくれた。 「政宗、コーヒー」  自宅のリビングで寛いでいるのは、宝来であった。 「家に帰れよ…」  政宗は、作業場から食事のために戻っただけであった。からくり屋も、かなり忙しい。  宝来の家も敷地内にあるが、宝来は時間を作ると政宗の家で寛いでいた。 「…時宗が埋め込み型の発信器を作ったけど、拒否したとか」  埋め込み型はペット用であった。 「そうだよ、父ちゃん、嫌だって怒る」
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