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でも、これはフェイクゴーストではない。政宗は、時計を元通りにすると、二千翔に返していた。
「あの、この時計…どういう由来のものか、分かりませんか?」
政宗は、首を振る。
「俺達、探偵ではないのですよ」
修理ならば、まだ引き受けるが、探偵はしない。政宗が席を立って奥に行こうとすると、二千翔は茶屋町に縋っていた。茶屋町の腕には、ガオンの時計がある。
「ガオンで、何があったのでしょうか?父も母も、ガオンの事は何も言いません。私は、記憶がないのですが、でも、何故かとても哀しい」
茶屋町が、少し俯く。
「…ガオンは有毒ガスで人が住めなくなった星です。有毒ガスは蓄積型で、少量ならば排出可能ですが、一定量以上となると蓄積されたままで排出できず、死体を燃焼させる時に抜け出します。又、死体の腐敗によっても抜け出します」
ガオンの元々の住人には、一定量以上の蓄積があった。一時期、有害ガスを発生するとして、ガオンの元住人は差別を受けた記録もある。茶屋町は在住していた期間が少ないので、有毒ガスは薬により排出されているが、それでもガオン出身とは今もあまり言わない。
「ガオンの差別があったのでしょう。でも、ガオンの時計はいい物です。自宅に、幾つかありますよ。見て行きますか?」
ガオン出身者は、故郷を失いながら、故郷を語る事も許されなかった。時計は、そんな心の拠り所だったのだろうか。
二千翔は、自宅玄関の時計、リビングのからくり時計を見て、感動していた。
「何て、きれいなのでしょう…」
そして、茶屋町が、時計の由来を調べると請け負ってしまっていた。
「…茶屋町…」
お互い元軍人、情報局出身なので、調べる事は苦ではない。でも、客相手で、客が満足する情報となると、分野が違う。
「はい、分かっていますよ。安請け合いしましたよ…」
茶屋町の見立てによると、二千翔は有毒ガスを一定量以上持ってしまっていた。薬では有毒ガスが抜けていない。二千翔の顔の色は、白くややパールがかっていた。それは、有毒ガスが表面に出てきた証拠であった。顔だけならば、化粧ということもあるが、二千翔の手もパールのように光っていた。
「表面に有毒ガスの影響が出てくると、残り時間は少ないと言われています」
それで、茶屋町は放っておけなかったのだ。
「人体や有毒ガス、そこは、上原に相談かなあ。どうにか、なるかもしれないし」
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