第1章

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 政宗は生体には詳しくない。 「そうですね…」  茶屋町も、預かった時計を見ながら、頷いていた。  茶屋町は既に引き受けていた仕事の合間に、時計の製造番号から素性を調べていた。政宗は、時計を丹念に分解し、一つずつパーツの由来を調べ出した。  精密に製作されたパーツは、拡大しても美しい。でも、オリジナルではないパーツが混じっていた。  長針と短針が、オリジナルではない。拡大すると、加工面に小さな穴のようなものも開いていた。 「これ、素材が脆いな。まるで、骨のようだ」  骨をコーティングしているように見えた。政宗が詳しく素材を調べると、本当に骨であった。 「何故、骨が…」  この骨の針では、耐久がない。もしかすると、この針のせいで、時計を動かないようにしたのかもしれない。時計を動かすと、針が折れる可能性が高かった。 「茶屋町、長針も短針も骨だな」 「そうですか。その理由は分かりそうです」  茶屋町の調査で、この骨の由来が分かりそうであった。  二千翔には兄が居たが、ガオンで死亡していた。有害ガスによる死亡で、その遺体はガオンから出す事ができなかった。ならば、この骨の持ち主である確率が高い。指一本、もしくは内部の骨の破片ならば、隠れて持ち出せたかもしれない。 「もしかして、この時計が墓標であったのか…」  父親が技師でガオンに派遣されなければ、子供は亡くなることはなかった。その上、遺体も引き取れなかった。親としての、悔しさや、哀しみが分かる。 「針のDNA鑑定してみるか」  ちゃんと調べる事にしたのだが、そこで奇妙な事実が発見された。たまたま、長針も短針も鑑定依頼したのだが、長針は二千翔の兄の確率が高かったが、短針は別人のものであった。 「誰の骨?」  時計に聞いても、回答は来ない。茶屋町が、骨のDNAで検索をかけていると、相手が分かったと思った瞬間に、データが削除されていた。  その後、何度も端末をハッキングされ、その度、詩織が撃退していた。 「とんでもない人物なのか?」  政宗は、軍経由で、DNAの検索を掛けてみたが、同じくデータを削除されていた。  削除されていても、何かが残っている筈だと、データの周辺を漁ってみる。すると、微かな情報が浮かび上がってきていた。
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