第1章

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「そんな時間はありません」  茶屋町は、宝来の軍艦で行けという。 「俺も行きますから」  茶屋町が行くといっても、宝来と一緒というのが問題であった。  政宗は子供の世話を詩織に頼もうとしていたが、詩織は頭脳部分で政宗のフォローをするという。エイタとミチルがいるから大丈夫とも思ったが、やはり心配であった。  そこで二千翔から連絡が入り、子供の面倒を見ると言ってきた。どうも、二千翔は茶屋町と連絡を取り合っているらしい。 「どういう関係なの、茶屋町」  政宗がからかうと、茶屋町が照れていた。 「そういう関係でしょうかね…」  茶屋町の女性関係は、政宗もよく知っている。驚くことはないが、よく紗知の件をふっきれたなとも思う。 「でも、政宗は別枠ですからね…」  親友で、真誓の親同士で、今はそれでいい。  知り得る情報を集めて、政宗は死んでから長く経過している坂江との、通信方法を検討していた。冷凍の状態にもよるが、解凍による損傷は大きい。冷凍ではなく冷蔵であることを願う。  機器を選定すると、機器とヒカリとの接続も試してみた。ヒカリの情報の保管量は半端ではない。坂江の脳をそのまま、ヒカリにコピーする予定であった。  機材の確認が終わると、軍部に運び込む。  王ランドにジープで向かうと、そこには宝来が待ち構えていた。  入り口で腕を組み、じっと政宗を見ている宝来が居た。宝来も、色々と言いたい事があるのだろうが、政宗はジープで静かに横を過ぎようとした。そこに、宝来が軽く飛び乗って、政宗の襟首を掴んで、再び飛んだ。 「茶屋町、機材の運搬は部下に指示しておけ。他に食料も運び込んでいいぞ」  宝来は、政宗の襟首を掴んで持ち上げていた。政宗は、苦しいのでじたばたしたが、やがて本気でキレていた。  政宗は、宝来の手を掴むと、空に飛び上がり、宝来の後ろへと飛び込む。宝来の首を締め上げようとすると、宝来も体勢を変え、政宗を投げ飛ばした。政宗は反撃に転じず、上へと跳ねると、三階部分のポールの上に立った。 「宝来、何か言いたいのか?」  政宗の声のトーンが低い。 「言いたいことは、山ほどあるけどな。危険に近寄るなと、何度も言っているだろう」
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