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宝来は、助走も付けずに飛び上がると、政宗を蹴り飛ばそうとしていた。政宗が察知して、更に上に移動する。宝来に蹴られたポールが吹っ飛び、かなり遠くに去っていった。その勢いで蹴られたのならば、政宗の骨も折れている。
「近寄ったわけではない。偶然に来てしまっただけだ」
言い訳無用とばかりに、宝来が残ったポールの上に立ち、政宗を見上げていた。
「とにかく宝来、頭を冷やしてくれ」
政宗が地上に降りようとした瞬間、宝来が政宗を殴ろうとしていた。
「宝来!」
体勢を変えられない、政宗が身構えた瞬間、目の前には茶屋町がいた。
「はい、ここでストップとしてくださいな」
宝来の拳を、茶屋町が手で受け止めていた。
「茶屋町!」
茶屋町と宝来が、暫し睨み合うと、空気が緩んだ。
「そうだな、話しを聞こう」
茶屋町は、相当痛かったのか、手を振って紛らわしていた。
「宝来、今のかなり本気でしたね…」
「まあ、茶屋町の姿も見えていたからな」
宝来は、茶屋町が止めるのを計算に入れて、本気で殴っていたようだ。
「…俺を殴るつもりでしたか…」
茶屋町は、かつての上司、宝来を睨んで笑っていた。
政宗は、宝来の自室へと通されていた。王ランドの宝来の自室は、元は政宗の部屋であったので、間取りは熟知していた。
宝来は仕事の打ち合わせの後で来るというので、政宗はソファーで寛いでいた。茶屋町は、情報は全て宝来にも渡しからと、再び機材の積み込みに行ってしまった。
そう言えば、機材の調整に集中してしまい、三日程風呂に入っていなかった。政宗は、勝手にシャワーを使用すると、宝来の服を漁り着込む。洗濯もすると、乾燥機に入れておいた。
「俺の服を勝手に着るな」
宝来は服にうるさい。政宗のように、着られれば何でもいいというわけではない。
「それに、すぐに脱がせるけどな」
宝来は部屋に入ってくると、服を脱ぎ始めた。
「しかし、本当に偶然なのか…」
ミラレスの天然体、しかも女性で成人が、何故、記録から消されていたのか。
「偶然だ」
宝来は、裸でワインを飲んでいた。
「さてと、するかな」
何をだと政宗の反論を許さないように、宝来はしっかりと政宗の唇を塞いでいた。宝来の舌が政宗に入り込み、息を止める。苦しさで、政宗が喘ぐと、宝来は口の端で笑う。
再びキスをしながら、宝来は政宗を抱き上げ、ベッドへと運んでいた。
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