第1章

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「二千翔と結婚しようかと思うのですよ」  茶屋町は、機材の処理をしながら呟いていた。紗知のボディには、陽香という少女の脳が入っている。茶屋町は、紗知を愛したからこそ、陽香には手を出せない。陽香は、茶屋町に好意を抱いているようなので、諦めさせるためにも、茶屋町は結婚しようとしているのかもしれない。 「それはいいけど。人間関係の説明はしたのか?」  まず茶屋町と陽香の関係。茶屋町と紗知の子供、陽菜。人間ではないが、政宗と茶屋町の遺伝子を引き継ぐ、真誓。 「おおよそは説明しました」  説明と実体験は異なる。 「で、何だって?」 「二千翔は、自分の寿命に気が付いていました。それで、子供も同時に得られるのは、嬉しいとの返事でした」  それならば、いいが。もしかしたら、一番の問題は、政宗と茶屋町の関係なのかもしれない。 「上原が、治療方法として、有害物質が表面にきたのならば、表面から除去すればいいと言っていた。皮膚及び皮下脂肪の全て人工に変えるという方法がある」  厳密には筋肉にも、有害物質は浸透している場合もあり、内臓、頭脳以外が人工になるということらしい。 「二千翔には、その度胸はありませんよ」  別人になれと、言っているようなものだった。  人工というのは、いくら生体型だと言っても、機械のように感じる。確かに普通の人間では、機械になれと言われたら、死を選ぶだろう。人工が主流になった今でも、偏見は多い。  ガオンを目前にして、地球軍の艦隊と合流となった。地球軍の責任者は、荒川で、政宗の苦手とする人物であった。荒川が居るということは、ヒカリの本体も居る。 「ヒカリ、ガオンのシステムから坂江の居場所を検索、ナビして欲しい」  ガオンには無人機しか降ろせない。有毒ガスは更に濃度を増し、地上でも数十分で致死量となる。 「ナビします」  政宗の元に居るのは、ヒカリの分身であったが、なかなか役に立つ。 「宝来、無人機をヒカリのナビで移動して欲しい」  宝来は、政宗の肩に居るヒカリを凝視していた。 「これ、荒川に情報が筒抜けか?」  ヒカリは手の形を取ると、違うとばかりに振っていた。 「荒川はヒカリを毛嫌いしているよ。あの人、くらげの類が苦手でな」  それは、ヒカリからの情報であった。荒川は、ヒカリの本体を、ガラスケースに入れ、保存室に陳列しているらしい。 「ならばいい。ナビの指示に従う」
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