第1章

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 有毒ガスの発生を知り、立花は家族を先に避難させようとした。しかし、知るのが遅く、長男は死亡した。しかも、有毒ガスの死亡者は遺体の搬送が禁止されてしまった。 『立花さんは、ここの星で軟禁されていた私と私の息子をも救けようとしました。私は逃げることが出来ませんでしたが、息子は遺体とすり替え、連れて行ってくれました』  息子?二千翔には生きている兄が居たが、それでは年齢が合わない。十代前半の子供。茶屋町は地上で生活していたので、同じ三年の滞在でも影響は出ていない。地下に坂江は居たので、影響は大きかった。  有毒ガスの胎児への影響は、ガオン出身者のその後で分かる。胎児は部分的に、成長しないという特徴が出やすかった。  政宗の近くにも、足と手が成長していない、ミラレスのエイタが居た。 「エイタ?」  エイタは、どの星で生まれたのか分からないと言っていた。その頭脳は優秀だった。天然体だからといって、子供も天然体になるとは限らない。 『瑛多(えいた)です』  立花は、どうしてエイタを手放したのだろうか。ミラレスの子供だと取り上げられたのだろうか。その可能性も高かった。  でもエイタは実験体の特徴も出ていた。 「もしかして、ミラレスでの実験体との子供なのですか」 『そうです。彼はミラレスの実験体でした』  その理論ならば政宗の息子、時宗もミラレスの実験体になるが、特徴は現れていなかった。 「もしかしてエイタは、貴方が作った実験体なのですか?」  坂江の映像が、俯いて目を閉じた。 第三章 君の声  坂江の彼は、ミラレスの戦闘体で、ミラレス消滅時の戦闘で死亡していた。坂江は諦めきれずに、ミラレスでの知識を元に、彼を復元しようとした。自分の卵子と、彼の遺伝子データで生まれたのが、エイタであったという。 「ある意味ハーフか」  エイタは、実験体と天然体のハーフなのかもしれない。 『そうなります』  そんな事よりも、ミラレスの実験データが優先だと、荒川が怒りだしていた。それには、困った現象があった。 「あの、荒川さん。坂江さんは死んでいません。少なくとも脳は生きていて、ミラレスのデータは発現していません」  しかも、坂江の所有国は、今は無きガオンであった。ガオンが無い今は、息子に所有権が移っている。息子が未成年であるので、エイタの親である政宗が仮の所有者となる。
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