第1章

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 繁華街を抜けた場所で、人通りがまばらであった。政宗は、逃げようかとも思ったが、追いかけっこにはウンザリしていた。捕まって、はっきりさせたほうがいい。政宗は抵抗を止めた。  政宗は車に乗せられると、そのまま砂漠まで連れられて行った。  砂漠には地球軍の宇宙船が、数隻着陸していた。その一隻に乗せられると、政宗はシステムを管理している部屋に押し込められていた。 「この図面は、何だ?」  責任者は、胎児を持ち去った時に会った男であった。政宗が顔を背けると、ムチを持って来ていた。 「ムチ?」 「そうだ、拷問に使用するものだ」  しかし、かなり古い型のもので、革製であった。どちらかというと、趣味のムチのほうに見える。 「本当に天然体だな。こんな立場の時でも、興味には負けるのだね」  責任者は、荒川という男で、地球軍の幹部の一人らしい。サドと名高く、確かに人など虫ケラのように見ていた。 「これは、自前のムチだ。君の家族も、皆殺しにしても構わない、それだけの権限も、私は持っている」  ムチが自前だと分かり、政宗は、ややすっきりとした。軍部の備品であったのならば、少し地球軍を見直すところであった。  地球軍の宇宙船は、昔の作りに似ていた。無駄がなく、通路は角がなくバーに捕まり移動する。中は無重力になるのだろう、そういう作りになっていた。政宗の宇宙船は、無重力にはならない。政宗は、物が宙に浮くのが嫌いなのだ。  政宗は図面を見ると、他の図面も映し出してみた。 「ああ、だから俺なのですね…これが、胎児の脳にありましたか?」 「その通りだ」  この図面は、政宗も良く知っていた。 「これは一見すると、機械の図面に見えますが、ミラレスの実験体及び天然体に発現している能力、重力無効の図式なのです。俺の親父が、機械で重力無効を作り実験し、人間に組み込んだとされています」  政宗の生まれる前のことなので、知識でしかその事実は知らない。けれど、ミラレスでこの図面を、政宗は父から見せられていた。 「それでは、これは何だ?」  その図面は、初めて見るものであった。重力無効の機械を展開しているが、この機能は別物であった。  政宗は、実験データを探し出すと、機械の構造と比べてみた。 「これは、人間の遺伝子を機械に組み替えたものです。遺伝子にどう組み込むか、機械でテストしていたようです」
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