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遺伝子を機械化してみると、生きた機械が産まれていた。この構造は、生き物にすると、真誓に近い。遺伝子をコピーし、組み込む。
ミラレスの研究というのは、確かに神への冒涜だったのかもしれない。
「では、これは何だ?」
巨大な機械の図面であった。完成品の図面で、すでに組み上がった状態のシミュレーションであった。
説明もデータも、捕捉さえもなかったが、政宗には声が聞こえていた。
「これは、人造人間の図面です。この図面を取り込み、発動させると、どこかで勝手に人造人間が産まれてきます。どこかでというのは、この図面が生きて動くものだからです」
こんな恐ろしい図面が、あるとは知らなかった。図面のデータが生き物のように、勝手にコピーを産み出し、通信で逃げる。通信先で、完全体を目指し、又通信を行う。
人造人間とは、どのような存在なのだろうか。設計図にも、外観は載っていなかった。
「そうか、ミラレスとは便利なものだな。君は国に所属していなかったな、このまま地球に連れ帰ることにするかな」
荒川の台詞よりも、政宗は図面データが発動していることの方が、気になっていた。無視されている荒川は、やや機嫌が悪くなっていた。
「…あの、この図面、発動させていますね……」
どうも、コピーが外に逃げていた。
「軍の者が解析していたな」
コピーを追ってみると、近くで合流していた。そっと合流地点を見てみると、半透明の何かが蠢いていた。
「胎児は無事に生まれたのですか?」
半透明なアメーバーの中に、巨大な目があった。これで、色が付いていたら、何かのアニメのキャラクターであった。まだ、荒川は気付いていない。
「母体は無事であったな。記憶を消して帰宅させたよ。胎児は崩壊してしまった」
産まれた瞬間に、脳が崩壊してしまっていたらしい。目を開ける事もなく、長い眠りについてしまった。
アリスと出会わなければ、生きて生まれただろうか。もしなどとは、考えたくはないが、とても哀しい。
「図面の解析ならば、拉致しなくても、からくり屋に依頼して頂ければ、いくらでもしますよ。他にスタッフもいますしね。機密も守りますよ。元軍人ですから」
荒川は何か考え込んでいた。政宗も半透明と、図面を見比べていた。これは、一体、どんな人造人間だったのだろうか。失敗だったのだろうか。
「ああ、そうか。ここが違うよ…」
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