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とある日の午後、あたしはハッターの屋敷でお茶を楽しんでいた。
今日もハッターのお茶は美味しい。そしてハッターの笑顔は極上だ。時々ディリックがスゥやちぃくんと言い合いになってるものの、それを除けば最高のお茶会だった。その時までは。
「アーリース」
耳元で甘ったるい声が聞こえたかと思うと、ぎゅっと後ろから抱きつかれた。そいつが誰かだなんて後ろを見ずとも分かった。変態だ。違う、いや、違うくないけど、ダルクローズだ。つまり、やっぱり変態だ。
「離れろ変態」
「照れちゃって今日も可愛いね、俺のハニー」
誰がハニーだ鳥肌が立つだろ、いやもう既に立っている。気色悪い。しかもよりによってハッターの前で抱きつきやがって。
肘を入れてやろうかと思ったけれど、それには椅子の背もたれが邪魔だった。ちっ。
「照れてないからキティのところにでも行ってらっしゃい」
今はまだ抱きつかれているだけだけど、いつこれが胸やら変な場所を触り出すか分かったものじゃない。
キティを身代わりにして逃げようか、と思ってついさっきまでキティが座っていた場所を指さすと、そこにキティの姿はなかった。畜生、あいつ巻き添えになりたくないからって逃げやがったな。
「キティと愛を語り合うのもいいけど、今は君と愛し合っていたいんだ」
誰が変態と愛し合うかものか、馬鹿か、馬鹿なのか、いや、変態だ。
「変態、今すぐアリスから離れないと再起不能にするぞ」
ちぃくんがフォークを片手に椅子から立ち上がる。あたしの為に変態に立ち向かってくれるちぃくん素敵。
その間スゥとディリックに関しては、巻き込まれたくないのかあたしたちから目を逸らして沈黙を貫いていた。こいつら汚ぇ。
「俺は君の為なら何度でもたち上がるよ! 何なら今すぐベッドに行こうか」
「二度とたたなくていいから脳汁ぶちまけて死ねばいいと思うよ」
ちぃくんが怖い。変態を前に平常心を失っているようだ。このままでは変態の死骸が出来そうだ。その方が世界は平和になるだろうが、ちぃくんにそんなことはさせられない。
「……あたしはもうお前の愛とやらで胃もたれ起こしそうだから、ディリックとでもイチャイチャしておいで」
「は!?」
突然矛先が自分に向かったディリックが非難の目を向けてくるけど、無視する。歯には歯を、目には目を、無視には無視をの精神だ。
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