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「俺の愛しのベイビーたちに会いに来たのさ」
「帰れ変態」
キティが真顔で言った。要は何の用事もないわけか。本当に帰れ。
「キティまでそんな冷たいこと言わないで、あーんしてあげるから、あーん」
と手に取ったスコーンを口元に近付けてくるダルクローズに、キティは無言のままその手を叩いた。ダルクローズの手から、スコーンが地面に落っこちる。ハッターの用意してくれたスコーンが。
「キティてめぇぇぇ!!」
よくもあたしの愛しのハッターのお菓子を!! いきり立ったあたしに何を思ったのかダルクローズが振り向いて、
「嫉妬しないでアリス、アリスにもあーんしてあげるから」
と今度はあたしに一口サイズのロールケーキをフォークで差し出してきた。
「え、やめて下さいハッターのお菓子を汚さないで変態」
折角のハッターが用意してくれたお菓子でも変態の手によって食べさせられると台無しだ。
ダルクローズはちっともあたしの言葉を取り合わずにあたしに「あーん」をしてくる。思わずその手を払いのけてやりたいと思ったけれど、その拍子にキティのようにお菓子を落としてしまってはいけない。
……変態に食べさせられたケーキでも、ハッターの用意してくれたお菓子であることは変わりない、と自分に言い聞かせて、ダルクローズの突きつけてくるロールケーキを口に入れた。うえぇ、美味しいけど気色悪い。
「美味しい?」
「ハッターのお菓子が不味いわけない」
ダルクローズはにこにこと笑顔を浮かべてあたしがハッターのお菓子を咀嚼するのを眺めている。そして「かーわいい」だの「持ち帰って食べちゃいたい」だのそんな台詞を囁いてきたけど、それはケーキを味わっているからという体で無視をした。
あぁもう本当にこいつは、顔はいいのに、性格が残念すぎる。ハッターの常識の半分でもこいつに分けることが出来たら、と考え掛けたけれど、それで今の優しくて常識のあるハッターが失われてしまうくらいならやっぱりこのままでもいいか、と考え直した。
でも本当に、ハッターの爪の垢を飲んでくれやいいのに……いや、この変態なら本当にやりかねないかもしれないから考えるのはやめよう。もしそんなこと実際にやり出したら、あたしはダルクローズのことをもう地を這い蹲るヘドロくらいにしか思えなくなるだろう。
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