第1章

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僕と夏樹が初めて出会ったとき、僕らは一緒の講義を受けていた。 「キャリア・デザイン」。 入学当初に分けられたシラバスに印字されたその授業は、名前だけ見たら何をやるんだかよく分からないけれど、どうやら履修しておいた方がいいらしい、とのことで受けることになった。今思えば、その情報はどこからのものだったかも曖昧だったのだけれど。 僕と夏樹は、本来学部が違うために一緒の授業を受けることはまずなかったのだが、その授業は多学部共通の授業だったのだ。その一回目の授業のとき、教授が学生同士の自己紹介をさせた。 なるべく、知らない人と。知らない人とのコミュニケーションが、これからの人生において必要なことなのだと、教授は滔々と語っていた。そして、教授の指示により席を替わりっていく。 なんだか、フルーツバスケットをやっているみたいだ。そんなことをぼんやり考えながら広い講義室をぐるりと回って座った席が、彼女ー坂下夏樹の隣の席であった。
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