第1章

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よろしく、と彼女は言った。でも、彼女は全然よろしくしたいような表情ではなかった。眉はきゅっと斜めに上がり、ややつり目気味の目が眩しい光を見るように細められていた。 少し怖気づきながら、僕はよろしく、と返した。そんな僕の表情を見て、彼女は慌てて目を開き、困ったように笑った。 「ごめんね、驚いたよね。私、すっごく近視なの」 そんなことないよ、と言おうと思ったが、ここは正直に言うことにした。ちょっとユーモアを混ぜて。割合は、一対三ほど。 「ちょっと、怖かったよ。僕がもっとイケメンだったら良かったのかな」 …イケメンは、まだ死語じゃないはず。多分。 「私は別にイケメン好きじゃないよ」 彼女はくすりと笑って言った。 そうやって笑うと、彼女の良さはものすごく引き立つ。まるで、大輪の花が咲き溢れているような。まあたぶん、「君の笑顔は大輪の花のようだ」なんて言ったら、今度は本気で彼女に睨まれただろう。案外、彼女は照れ屋なのだ。 そして、イケメン云々の彼女の台詞が僕にとって失礼だということは少し後になってから気づいたものだ。まあ、もっとも、僕の顔は自慢できるようなものではないのだけれど。
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