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ーーおかぁ・・・おか・・・。
片言の舌足らずな声が、女を呼んでいた。
ーーおかぁ、おかぁ・・・。
必死に呼ぶその声が、次第にかすれて、遠くなり・・・慌てて追いかけて追いかけて、女はようやく抱きしめた。
ーーかがりっ!!
愛しい我が子を深く胸に納め、ほっと安堵の息を吐き出した女はすぐに気づく。
ぬちゃり、ぬちゃり。
抱きしめたその手の平に、ぬめった厭な感触。
抱きしめた大事なものが、重く冷たくなる。
やがて悟る、動かない小さな身体。
ーーい、いやぁぁぁぁぁぁぁ!!
闇の中でうずくまり歎き続ける彼女を、『ソレ』は静かに見つめていた。
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