2100人が本棚に入れています
本棚に追加
余り、派手なのは好みじゃない。
でもレースだとか可愛らしいのは好きだ。
何度も通って選んだのは、エンパイアスタイルのウェディングドレスで上半身はシンプルだけど腰から綺麗なレースのトレーンが背面と裾を飾る。
「どう、かな」
更衣室のカーテンを開けると、外で控えていた亨が目を見開いた。
今までに着たデザインのものでも「可愛い」と言ってくれてたけど、無言のその表情が一番の決め手だった。
「変?」
「いや、それがいい」
もう一度尋ねると頷きながらそう言って、私の隣に立つ。
少し向きを変えて鏡に向かい合うと、鏡の中の亨は真横で私の顔ばかり見ていて。
「ちょっと……姿見の方見てよ」
「もう見た。俺はそれがいいけど春妃が好きなのにしろよ」
仮で簡単に付けてもらったウェディングベールを降ろしたり捲ったりして、式当日の真似事のようなことをする。
そして急に顔を近づけてくるから、まさかキスでもするんじゃないかと一歩遠ざかろうとしたけれど、ドレスが邪魔で上手く動けなくて。
易々と接近した亨は私の耳元で囁いた。
「このまま更衣室に閉じこもりたくなるな」
最初のコメントを投稿しよう!