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必死で仕事をやりくりして、その合間に指輪の用意もして素知らぬ顔で当日を迎えたが。
喜ぶ春妃を見て安心したり、また上の空になる様子に心配にもなったり。
散々振り回された上に、いざという時に大泣きされてもうダメかと思った。
結局は、大泣きしながらの逆プロポーズだったわけだが。
あの時の俺の気持ちは、春妃にはわかるまい。
失望させてしまったプロポーズの仕切り直しでぼろぼろと涙を零しながら謝られ、絶望しかけてからの逆プロポーズ。
かっこ悪いやら嬉しいやら情けないやらで、
いつか喧嘩した時にでも恨みがましく愚痴ってやろうと思っているが。
あれはあれで、幸せだった。
愚痴にはならないかもしれない。
コンコン、と扉をノックする控えめな音がした。
「新郎様、式場の方へお願いします」
「はい」
やっとだな、と腰を上げる。
流石にちょっとした緊張が走り背筋を伸ばした。
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