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「雪穂」
もう何度呼ばれたか、
きつく抱きしめ合う中で、伊緒の唇が私の耳に押し付けられ
優しい声が耳をくすぐった。
「僕も日本に行くから、手紙も送るから。それと―――」
「...っうん」
嫌だった。
出来るなら、一人でもここ―フランス―に残りたかった。
14年の人生で10年をここで過ごした。
日本でのあの悲劇から、辛い日々から逃れるために...
っていうのは、半分冗談。
元々は、父の仕事上フランスに行かなければいけないのが理由だった。
初めは日本を離れたことが不安だったのに、人生の大部分をここで過ごし、恋人もできたら、誰だって離れたくないと思うのが普通でしょう?
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