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冷たい....
数分前から降り始めていた雨にようやく気付いたようにソレは顔を上げた
雨だ...
良い、天気だな...
目を細めながら空を見つめるその姿は儚く今にも消えてしまいそうだった
ピチャン
ッ!?
俺の髪をつたって落ちた水滴が水たまりに触れて弾けた瞬間、ソレはバッとこちらを向き初めて俺の存在に気付いたように目を見開いた
そしてすぐさま体勢を変え、今まで背を向けていた細い路地へ走り出した
「待って!」
自分でも分からない内に、なぜかそう声をかけていた
その言葉に反応してソレはビクッと肩を揺らし、足を止めた
ゆっくりと警戒しながら首だけ動かして俺に視線を合わせる
その視線の鋭さに思わずたじろいだ
感情のこもっていないような冷たい目
しかしその海のように深く、蒼い目に何故か心が動いた気がした
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