摩天楼に響く悲鳴

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の通り魔法使いでね、あんまり喧嘩とかできないんだ」 「魔法なんてないだろう」 「例えさ。要は武術だの剣術だのやってないってこと。しかしお前さんは強そうだ。軽いものとはいえ鎧を着て、物騒にも槍を持ち腰に手斧も提げている。しかしながら摩天楼には来たばかり、そうだろう?」  確かにこの男の言う通りだ。確かに俺は武器をいくらか持ってはいるが摩天楼についてはほとんど知らない。 「俺は自分で言うのもなんだが下層については結構な事情通でな。しかし、お前さんみたく喧嘩はできない。役場に付いたら適当な奴を見つけて一緒に調査しようと思ってたんだ」 「それで俺がちょうど良さ気だと」 「ああ。報酬はきっちり半分。どうだ、悪い話じゃないだろう」  悪い話じゃない、か。確かにそうかもしれない。摩天楼について知識もないのに碌に調査ができるとも思わないし、ここで知り合いが増えるというのも悪くない。報酬を半分にしても金貨十五枚、十分すぎるな。もっとも、目の前の男がどれだけの働きをするのかは知らないが。 「報酬はお前の働き次第では六四や七三になるかもしれないがな」
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