摩天楼に響く悲鳴

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「あそこの明かりがあまりついていなかっただろう。あれは照明一つ変えるのも苦労しているからスラムまで手が回ってないのさ。或いは、変えていないからスラムになっているのか」 「なるほどな」  ここには五階建てぐらいのアパートらしきものもあるのだが、その屋上に上っても天井まではまだ十メートル以上はあるだろう。むしろ一体どうやって照明を変えているのか見てみたいものだ。 「それで、今から向かう下層役場はこの辺りにあるのか?」 「いいや、もっと上の層にある。さっき三十あるって言ったがその三十層目、つまり下層の一番上は政治関係の場所が集まっているのさ」 「なるほど」 「ちなみにこの層はスラムと商業区と居住区に三分されている。中央にあるエレベータを出たところがスラムで、右手に商業区、左手に居住区が広がっているわけだ」  そう言われてみれば確かに自分はエレベータから右手に行って商店街へと辿り着いていた。 「それで今はどこへ向かっているんだ?」  話の通りであれば中央のエレベータに向かうべきだったのではないだろうか。今向かっているのはそれとは逆方向のはずだ。
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