摩天楼に響く悲鳴

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始めたいものだ。別に金に困っているわけでもないが手元にあればそれだけでありがたいものだろう。 「ん?」  ふと後ろを付いて来る影に気が付く。髪を後ろの下の方で二つに結んでいる女で、カーディガンに軍服の様なズボンを合わせ革のブーツを履いている。それにリュックを背負っており、もう少し装備を整えればどこかの探険家でも名乗れそうに見えた。 「どうした、何かあったか?」  狗神はそう言って俺の見ていた方に視線を向けた。すると、女がこちらに近寄ってくる。 「おい、知り合いか?」 「え、ああ、そうね。いやいや知らない知らない」  狼狽える狗神を放置し、身構えつつ女が近寄ってくるのを待つ。武器は持っていないようだが一体何のつもりだろうか。追い剥ぎだとすればこんなに目立つ追い剥ぎは他にいないだろう。女は俺たちの傍まで来るとしばらく黙っていた。何か言った方がいいのだろうかと狗神に訴えるような視線を向けてみたが、狗神は女の方をじっと見て警戒しているようでそれに気付くことはなかった。 「あの……」  そうこうしているうちに女がこちらに軽く一歩踏み出した。思
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