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摩天楼、人々は希望の象徴としてそれを見上げる。この地上を支配している獣の恐怖から逃れられる唯一の場所、人類の叡智の結晶だ。しかしながらその中身というのは人々の想像ほど明るいものではないらしい。少なくとも、摩天楼の下層においてそれは顕著なまでに現れていた。
「まるでスラムだな」
瓦礫の影で身を休める人々、地面に頭を擦り付けて叫ぶ乞食、僅かな食料を求め盗みを働こうと寄ってくる盗人。手に持っている槍をちらつかせ牽制しながら歩く。天井にはいくつもの照明がついているが明かりの付いていないものがいくつもあり、それがより周囲の廃墟のような空気を助長していた。希望の象徴も中に入ればこんなものか。
「そこの少年」
「ひっ」
たまたま近くに隠れていた少年に話しかける。彼は突然話しかけられたことに驚いたのか、声を上げて固まってしまった。
「別に取って食おうってわけじゃない、道が聞きたいだけだ。仕事を探してるんだが、どっちに行ったらありそうだ?」
少年はおどおどとして何も言わなかったがある方向を指差した。
「……なるほど、建物もこっちよりしっかりしてるし何かありそ
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