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「配送ギルドか」
物資の運搬を一手に担うギルドだ。摩天楼内部だけでなく、他の高層ビルや地上にある国とも交流はある。そして外に出れば当然に獣の危険があり、故に護衛はいくらいても困らない、はずだ。そう思い戸を叩こうと思った時、不意に後ろの方から悲鳴が聞こえたような気がした。
「……何だ、今のは」
目の前には何の変哲もない街並みが広がっている。道行く人は何事もなかったかのように歩き続け、或いは一瞬立ち止まった人もすぐにまた歩き出した。このぐらいは日常茶飯事と言うことだろうか。しかし、どうにも気になって悲鳴が上がったと思われる路地に入って行った。
「たぶん、こっちだったと思うんだがな」
薄暗い路地には誰かがいた形跡すらなく、かなり大きな木材や曲がった鉄パイプなんかが落ちているだけだった。
「ふむ」
とりあえず手近な鉄パイプを手に持って見るが血がついていたりするようなことはなく、これはさっき悲鳴が聞こえたのは気のせいで何か別の音がそんな風に聞こえたのかもしれない。そう思った。
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